〈年金の手続き〉寡婦年金と死亡一時金|どういうときにもらえる補償なのか解説します

夫を亡くしました。国民年金に加入していたのですが、年金事務所に行くと、夫との間に子どもがいなかったため、遺族基礎年金ではく寡婦年金か死亡一時金の給付になるだろうと言われました。寡婦年金と死亡一時金について教えてください。

国民年金に加入していた人が亡くなった場合、遺族基礎年金ではなく寡婦年金または死亡一時金がもらえる可能性があります。これらについて、

  • どういうときにもらえるものなのか(要件等)

 

遺族基礎年金の受給要件に該当しなかった場合でも、国民年金の独自の給付として、寡婦年金、死亡一時金というものがあります。

 

どちらも受け取ることができる場合は、いずれか一方を選択し、受給することになります。

両方受給することはできませんので注意しましょう。

 

寡婦年金、死亡一時金とは、簡単にお伝えしますと、

  • 高年齢の寡婦(夫を亡くした妻)に対する所得補償
  • 納付した保険料が掛け捨てにならないための補償

として支給される制度です。

 

ここでは、それぞれの受給要件を解説していきます。

 

※遺族基礎年金については、こちらをご覧ください。

 

1.寡婦年金とは|夫を亡くした妻の、期間限定の年金

まず、寡婦年金についてご説明いたします。

寡婦年金にも、

  • 亡くなった人の要件
  • 受け取る遺族の要件

があります。

 

亡くなった人の要件

  • 亡くなった人が国民年金加入者
  • 死亡日の前日において、第1号被保険者の保険料納付済み期間と免除期間が合わせて10年以上あった場合
    →つまり、10年以上きちんと納付した人(申請して免除してもらった期間も含む)※ただし未納は対象外

 

受け取る遺族の要件

  • その夫によって生計を維持していた
  • 婚姻関係が10年以上継続している妻である
    (給付の対象期間は、60歳から65歳になるまでの間)

 

つまり、妻自身が老齢基礎年金を受給できる年齢までの繋ぎの年金ということになります。

 

※注意※

亡くなった夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金の支給を受けていた場合は、支給されません。

また、夫が死亡した当時、妻が老齢基礎年金の繰上げ支給を受けているときも、寡婦年金は支給されません。

参考:寡婦年金(日本年金機構HP)

 

〈参考〉寡婦年金の金額

寡婦年金は、『死亡した夫が65歳に達したとき受給できたであろう老齢基礎年金の年金額の4分の3に相当する額』と定められています。

 

したがって、もし亡くなった夫の老齢基礎年金額が816,000円(満額)だった場合、816,000円 × 3/4 = 612,000(年額)円となります。

(1か月に換算すれば、51,000円ということになります。年金は2か月ごとの振り込みになりますので、51,000×2=102,000円が2か月ごとに振り込まれるイメージです。)

参考:寡婦年金(日本年金機構HP)

 

2.死亡一時金とは|一定期間以上の納付がある人への一時金

次に、死亡一時金についてご説明いたします。

こちらも同様に、

  • 亡くなった人の要件
  • 受け取る遺族の要件

があります。

 

亡くなった人の要件

  • 亡くなった人が国民年金加入者
  • 死亡日の前日において第1号被保険者の保険料納付済期間が36か月(3年)以上あった場合

 

受け取る遺族の要件

  • 死亡した人と生計を同じくしていた(※)遺族
  • 以下の優先順位の上位者
    配偶者 ⇒ 子 ⇒ 父母 ⇒ 孫 ⇒ 祖父母 ⇒ 兄弟姉妹

(※)「生計を同じく」の考え方

日常の生活の資を共にすることをいいます。

なお、別居している場合でも、生活費や療養費等を常に送金しているときは、生計を同じくすると取り扱われます。

 

つまり死亡一時金とは、納付した保険料が掛け捨てにならないように支給される一時金というイメージです。

 

※注意※

死亡一時金は納付した保険料が掛け捨てにならないためのものであるため、死亡した方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていた場合は受け取ることができません。

 

〈参考〉死亡一時金の金額

保険料を納めた期間 一時金の額
3年以上15年未満 120,000円
15年以上20年未満 145,000円
20年以上25年未満 170,000円
25年以上30年未満 220,000円
30年以上35年未満 270,000円
35年以上 320,000円
  • 付加保険料納付済期間が3年以上ある場合は、さらに8,500円が加算されます。
  • 亡くなった日から2年を経過すると、死亡一時金を受ける権利は消滅します。

参考:死亡一時金(日本年金機構)

 

3.寡婦年金・死亡一時金に関する注意事項

大前提として、寡婦年金・死亡一時金のいずれかをもらえる状況というのは、

  • 亡くなった人が国民年金に加入していて
  • 遺族基礎年金の要件を満たしていない場合

に、要件を満たす遺族が受け取れるものとなります。

 

詳しくは、以下のフローチャートをご覧ください。
(タップすると拡大表示できます)

遺族基礎年金フローチャート

 

また、寡婦年金と死亡一時金の、どちらの受給要件を満たしていたとしても、両方を同時に受け取ることはできません。

どちらか選択をすることになるため、ご注意ください。

 

※寡婦年金、死亡一時金の金額は、年金事務所で確認することができます。

参考にし、金額が高い方を選択するとよいでしょう。

 

4.まとめ

寡婦年金・死亡一時金は、遺族基礎年金を受け取る要件に該当しない場合にもらえるものですが、こちらにも受け取る要件がありますので、ご自身が該当するかどうかは、年金事務所に確認するとよいでしょう。

 

また、請求の際に必要となるものとしては、それぞれ専用の「請求書」の用紙があります。

年金事務所に備え付けられていますので、必要事項を記入し、窓口に提出しましょう。

 

その他添付書類も必要ですので、詳細についてはこちらをご参照ください。

 

 

>>相続手続き代行サービスについてはこちら

 

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この記事を執筆した専門家

この記事を執筆した専門家 吉﨑 昌代
  • 行政書士
  • 社会保険労務士

吉﨑 昌代

Masayo Yoshizaki

全国社会保険労務士会連合会第27210156号
大阪府社会保険労務士会第22594号
日本行政書士会連合会16262536号
大阪府行政書士会第7268号

相続専門の社会保険労務士、行政書士。ご遺族の今後の生活の糧となる「年金」の専門家。適切に漏れなく年金が受けとれるように手続きの全てに対応する。金融機関出身で、銀行の相続手続きにも強い。G1行政書士法人所属。

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