- 遺言書を隠したり破棄したりすると、その相続人は相続権を失う(自分に有利な遺言書を隠した場合は例外もある)
- 相続人全員が合意をしていれば、遺言の内容とは違う遺産分割協議をすることができる
結論として、そもそも遺言書を隠してはいけません。
なぜなら、民法上で遺言書を隠したり破棄したりした場合、欠格になることが定められているためです。
欠格とは、相続人としての権利を失うことです。
この記事では、遺言書を隠すとはどういうことなのか、隠すとどうなるのかについて、詳しく解説していきます。
1.遺言書を隠すと欠格(相続権を失う)になる
見つけた遺言書を隠すと、相続人としての権利を失います。
それは手書きの自筆証書遺言でも、公証役場で作られた公正証書遺言でも、変わりません。
民法891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
この条文の「隠匿」が、まさに隠すことに該当します。
(そして隠すだけでなく、勝手に改変したり破棄したりすることも該当します。)
そして「相続人となることができない」ことを、「相続欠格」といいます。
つまり、遺言書を隠すと相続欠格になり、相続人としての権利を失うことになります。
2.〈例外〉見つけた本人に有利な遺言書の場合
しかし、1章でお伝えした「相続欠格」には、例外があります。
それは遺言書が、見つけた本人に有利な内容である場合です。
冒頭の相談内容のように、「遺言書の内容が圧倒的に自分にだけ有利で、他の相続人と気まずくなるので遺言書を隠して、遺産分割協議をしたい」といった場合が当てはまります。
1章で紹介した法律(民法891条の5)に関するものとして、「遺言書を破棄/隠匿した場合、不当な利益を目的とするものではなかったときは相続欠格に当たらない」という判例が出ています。
詳しくは「裁判例結果詳細」をご覧ください。
しかし遺言書があったとしても、相続人全員が遺産分割協議をし、その内容に合意をしていれば、(遺言内容ではなく)遺産分割協議の内容で相続を進めることが可能です。
よって、遺言書がどんな内容であれ隠したりせずに、遺言書の存在を伝えたうえで、相続人同士で話し合うようにしましょう。
3.まとめ
見つけた遺言書を隠すと、あなたが相続人である場合、相続人としての資格を失います。
見つけた遺言書が、
①自筆証書遺言の場合
→封の有無に関わらず、勝手に開けたりせず家庭裁判所で検認の手続きをしましょう。
②公正証書遺言の場合
→検認は不要で開封することができます。
原本は公証役場に保管されており、相続人であればどこの公証役場保管されているかを検索することができます。
よって隠し通すことはほぼ難しいです。
②の理由から、遺言書を作成する側であれば、相続人が隠したり、破棄したりすることを防ぐためにも、公正証書遺言で作成することをお勧めします。
いずれにせよ、どのような形であれ遺言書には、故人の大切なメッセージが書かれています。
その想いを尊重するためにも、見つけた遺言書は隠したりせず、他の相続人に伝えてから「どうするか?」相談するようにしましょう。
相続人全員が合意すれば、遺言書ではなく遺産分割協議をして、その内容で相続手続きをすることが可能です。
この記事がお役に立てれば幸いです。