- 相続人の中に行方不明の人がいる場合は、「不在者財産管理人」が必要
- 「不在者財産管理人」の職務や申立てに必要な書類
- 「不在者財産管理人」との遺産分割協議の進め方
相続手続きは、(遺言書がない限り)相続人全員が協力して相続手続きを進める必要があります。
ですが、中には他の相続人と連絡がつかない、居所がわからない、といった言わば行方不明者がいる場合もあります。
相続人の足並みがそろわないと、相続手続きが一向に終わりません。
そこでどうするかというと、相続人に行方不明者(不在者)がいるときは、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。
不在者に代わって不在者財産管理人が代理人となり、他の相続人と一緒に遺産分割協議を進める必要があります。
この記事では、不在者財産管理人について解説していきます。
目次【本ページの内容】
1.不在者財産管理人とは
不在者財産管理人とは、不在者に代わって財産を管理する人のことを言います。
不在者財産管理人は、他の相続人や債権者など利害関係人が家庭裁判所に申立てをすることで選任されます。
どういう性質があるものなのか、以下についてご説明します。
1-1.〈何をする人?〉不在者財産管理人の職務内容
不在者財産管理人の職務は、不在者の財産についての
- 財産管理
- 財産目録の作成
- 家庭裁判所への報告
となります。
基本的には財産の管理や保存をするのみで、勝手に売ったりあげたり等の処分行為をすることができません。
あくまでも、不在者の「財産を守る」ことが一番の目的となります。
1-2.〈誰がなるの?〉不在者財産管理人に選ばれる人
不在者財産管理人になるには、資格や条件はありません。
しかし家庭裁判所が判断をして選任するため、不在者との関係性や利害関係の有無を考慮されるようで、弁護士や司法書士などの専門職が選任されることもあります。
また不在者財産管理人の申立ての際に、申立てをする人が、候補者として任意の人を希望することもできます。
ただし、最終的には家庭裁判所が判断するため、必ずしも候補者が選ばれるとは限りません。
1-3.〈どう選任する?〉不在者財産管理人の申立ての流れ
まず申立てをする家庭裁判所は、不在者の従来の住所地、または居所地の家庭裁判所となります。
どこの家庭裁判所でもいいわけではないため、ご注意ください。
(最後に確認できたその人の住所地、というイメージです。)
申立てに必要な書類は、以下の6つです。
これらを用意して、上記の家庭裁判所に提出します。
- 申立書(裁判所のHPよりダウウンロードできます)
- 不在者の戸籍謄本、戸籍の附票
- 不在者財産管理人の候補者の住民票
- 不在者の財産に関する資料(預貯金や不動産についての資料)
- 不在者と申立人との関係が分かる資料(相続関係が分かる戸籍謄本など)
- 不在の事実を証明する資料(「宛所なし」として返ってきた郵便物など)
上記が基本的に必要になりますが、不在者との関係性や不在の事実の証明などで、家庭裁判所より追加の書類を求められることがあります。
詳しくは家庭裁判所に事前に確認するようにしましょう。
1-4.〈報酬がいる?〉不在者財産管理人の報酬
不在者財産管理人の申立てでの注意点としては、不在者財産管理人からの請求で、不在者財産管理人に対する報酬が発生することがあります。
(必ず発生するわけではありません。不在者財産管理人が家庭裁判所に請求することができます。)
不在者財産管理人の職務は、
- 不在者が現れたとき
- 不在者の死亡が確認されたとき(失踪宣告も含む)
- 不在者の財産がなくなったとき
まで続きます。
不在者財産管理人の報酬は基本的に、不在者の財産から支払われます。
そのため、不在者の財産が減っていくことがありますし、不在者の財産で足りない場合は、申立人が予納金として支払う場合もあります。
2.不在者財産管理人との遺産分割協議
1-1章でもご説明した通り、不在者財産管理人の職務は不在者の財産管理です。
そのため、他の相続人との遺産分割協議に合意して、遺産分割協議書に署名捺印をすることができるように、不在者財産管理人は家庭裁判所での「権限外行為許可」を得ることになります。
また、不在者財産管理人の職務を言い換えると、「不在者の財産の保存」でもあります。
そのため、不在者が不利になるような遺産分割協議に同意することもできないため、不在者の法定相続分は確保されることになります。
このようにして、不在者財産管理人が他の相続人と一緒に遺産分割協議をし、成立することで、遺産相続手続きは可能となります。
3.まとめ
相続人の中に行方不明の人がいる場合でも、不在者財産管理人を選任してもらうことで遺産分割協議進めることができます。
ただし不在を証明するものや、家庭裁判所とのやり取りなど、手続きで躓くことも多いものです。
「不在者財産管理人」の選任が必要かな?どうかな?と迷われたときは、専門家の力借りるとよいでしょう。