- 内縁の妻や夫、パートナーには相続権がないこと
- 相続で確実に財産を渡す方法は遺言書を作ること
- 生命保険の活用や特別縁故者に該当すれば、財産を渡せる可能性があること
多様性の時代になり、最近は「婚姻」という形に縛られずに「パートナー」として生活を共にする人も増えてきています。
しかし現在の法律では、実際に婚姻届を役所に提出しない限り、法律上の夫婦として認めらません。
例え、
- 事実上の「夫婦」として長い時間を共に生活してきたとしても
- 2人の間に子どもがいたとしても
です。
「法律上の夫婦」でなければ、内縁の夫が亡くなり相続が始まったときに妻(配偶者)としての相続権がなく、内縁の夫の財産をたとえ1円でも引継ぐことができないのです。
そのために、内縁の夫婦やパートナーに死後財産を遺したい場合は、生前の対策が必要になります。
そこでこの記事では、相続が始まった時に、内縁のパートナーに財産を引き継ぐ方法(それも相続で絶対に後悔しない方法)を具体的に解説します。
ぜひ最後までお読みください。
1.方法①遺言書で財産を譲る
相続が始まった時に内縁の妻(夫)に財産を確実に渡す方法、それは遺言書を作成することです。
遺言書がない場合、故人の財産は法定相続人が相続します。
(子がいれば子、子がいなければ両親や祖父母、両親や祖父母が先に他界している場合は兄弟姉妹や甥姪)
そこで、相続権のない内縁の相手に財産を渡したい場合は、予め遺言書を作成し「自分が亡くなったとき、財産を○○(内縁の相手)に遺贈する」と記しておくことが有効です。
(相続人ではない人に、相続で財産を渡すことを「遺贈する」と言います。)
遺言には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。
- 自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言をする人が全文(財産の目録部分を除く)自筆で書く遺言ですが、日付及び署名、そして印鑑を押してあることが遺言書として成立する要件です。
いつでも思い立ったときに作成できるメリットがありますが、相続が始まったときに必ず「家庭裁判所で検認」の手続きが必要になるというデメリットもあります。
(家庭裁判所の検認とは、「相続人全員に遺言書があることを知らせる」ことと「遺言書の偽造・変造を防止する」ための手続きです。)
遺言の内容や形式に不備があると無効になることもあるため、作成するときは細心の注意が必要です。
- 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。
(公証役場は全国各地にあり、そこにいる公証人は検察官や裁判官として実務に携わった法律のスペシャリストです。)
具体的な作成方法は、遺言者が公証人の前で遺言の内容を告げて、公証人がそれを文章にして作成します。
作成するのはあくまでも公証人であるため、要式的に遺言が無効になることはほぼありません。
また家庭裁判所での検認の手続きも不要になります。
デメリットとしては、作成する時点で公証人とのやり取りが必要であること、公証人手数料などの費用がかかることが挙げられます。
【注意!】
内縁の妻(夫)に財産を渡すために遺言書を作成する際、知っておくべきことは「遺留分の請求」です。
遺留分とは、一定の相続人に対して保障されている、遺言によってでも奪うことのできない最低限の受取分です。
(※遺留分の権利がある相続人には範囲があります)
つまり、たとえ遺言書に「内縁の妻に全ての財産を遺贈する」と書いてあり、その通りに全財産を譲り受けたとしても、法定相続人から遺留分の請求を受けた場合は、法定の割合に基づいて財産を相続人に渡さなければならないということです。
遺言書を作成する際は、このような「遺留分」があることも必ず覚えておきましょう。
2.方法②生命保険の受取人に指定する
2つ目は、亡くなったときの死亡保険金等の受取人に、内縁の妻(夫)を指定する方法です。
(厳密には生命保険金は「相続財産」ではありませんが、内縁関係の相手に自身の財産を渡す方法としてご紹介します。)
生命保険は、被保険者(保険の対象となる人)が亡くなると、指定された受取人がすぐに保険金の請求をすることができます。
しかし、その受取人に指定できる人は
- 法律上の配偶者
- 2親等以内の血縁者(子や孫、両親や兄弟姉妹など)
と決められていることが多く、そこに内縁の妻や夫は入っていません。
ですが、多様性を尊重する昨今の状況のもと、保険会社によっては、
- 双方に、婚姻届けを出した配偶者がいない場合
- 一定以上の同居期間がある場合
などは、内縁の妻や夫を生命保険の受取人に指定ができることもあるようです。
とはいえ、やはり基本的には内縁関係では受取人に指定できないことが多いため、必ず事前に保険会社に確認して、難しそうであれば遺言書の作成を検討するようにしましょう。
3.「特別縁故者」に該当すれば相続財産分与が受けられる
遺言書もなく、また生命保険の受取人にも指定されていない場合、亡くなった人の内縁の妻(夫)は故人の財産を絶対にもらうことができないのでしょうか?
可能性は低いかもしれませんが、もうひとつ手段があるとすれば「特別縁故者に対する相続財産分与」です。
少し難しい話になりますが、これについてご紹介します。
特別縁故者とは、字の通り亡くなった人と特別の縁故(親しい関係)にあった人のことです。
亡くなった人に配偶者、子、両親、祖父母、兄弟姉妹や甥姪など相続人が誰もいない場合、特別縁故者は家庭裁判所に対して相続財産の全部または一部の分与を申立てることができます。
これが「特別縁故者に対する相続財産分与」です。
※「特別縁故者に対する相続財産分与」の申立ては、相続人がいないことが前提であるため、まず家庭裁判所で「相続財産清算人の選任」の申立てをする必要があります。
「特別縁故者に対する相続財産分与」の申立てができる条件は下記のとおりです。
・相続人がいないこと
家庭裁判所により選任された相続財産清算人が、相続人を捜索するための公告をし、その期間内に相続人が出てこない場合「(亡くなった人に)相続人がいない」と認められます。
・請求できる人
亡くなった人と「一緒に暮らしていた人」や「看病等をしていた人」、その他亡くなった人と特別に縁故があった人
・申立て期間
家庭裁判所の「相続人の捜索の公告」の期間満了後、3か月以内
(詳しくはこちらへ:特別縁故者に対する相続財産分与(裁判所HP))
誰もが「特別縁故者に対する相続財産分与」の申立てができるわけではありませんが、条件に該当する場合は選択肢となるため、ぜひ覚えておいていただければと思います。
4.まとめ
法律上、内縁関係の配偶者には相続する権利がありません。
ご自身が亡くなったときに内縁関係の妻や夫に財産を渡したいとお考えの場合は、ここでご紹介した①遺言書や②生命保険など、ぜひ選択肢としてご検討ください。
特に、当センターとしては、遺言書の作成をお勧めしています。
生命保険や特別縁故者と違い、受け取る人の条件がなく、有効な遺言書であれば確実に自分の大切な人に財産を渡すことができるためです。
遺言は遺される方たちへのラブレターです。
あなたの思いをしっかりと伝えてあげましょう。
遺言書の作成をはじめ、内縁の方の相続については当センターへお気軽にご相談ください。