相続税の申告は自分でできる?知っておきたいリスクと注意点を解説

父が亡くなり、相続人は母と私の2人で財産額は4,440万円ほどです。
基礎控除が4,200万円と税務署で聞いたので、このぐらいなら自分で相続税申告もできるのでは?と考えていますが、実際のところいかがでしょうか?リスクなどがあれば教えてください。

  • 相続税の計算や申告は自分でしてもよいこと
  • 自分で申告する際は控除の適用漏れに注意すること
  • 税務調査のリスクを考慮して丁寧に申告書を作成すること

 

相続税は、基礎控除額を超える財産を相続した場合に申告、納税する義務があります。

 

「相続税の計算って難しいって聞くけど、自分で計算/申告できないものかな?」

という声は、実際よく聞きます。

 

自分で申告しない場合は、税理士に依頼して作成することになります。

そうなると、税理士への報酬が発生するため、どうしても損をするような気にもなります。

 

この記事では、実際よくある疑問、

  • 相続税申告は自分でできるのか?
  • 自分で申告する場合、どうやって進めるのか?
  • 自分で申告する場合、気を付けるべきことはあるか?

にお答えする形で、税理士が解説します。

 

「自分で申告しようかな」と考えている方はぜひご参考ください。

 

1.相続税の申告は自分でしてよいもの

結論から言いますと、相続税の申告は相続人が自分で行うことはできます

 

そもそも相続税の申告は「自己申告」です。

原則として、納税者本人が申告することになります

 

ですが、相続税申告には専門的な知識が必要となるため、納税者の代理人として税理士のみが申告をすることが認められています
(税理士法)

 

相続税の申告は、原則は本人が申告しますが、税理士に代理を頼むことも可能です

 

相続税の申告は、10か月以内という期限があります。(※1)

期限内に、亡くなった人の住所地を管轄する税務署に提出する必要があります。

 

ですが実際よく耳にするのが、

「もうすぐ死亡から10か月ですが、税務署から何も連絡がありません。このまま待っていれば相続税の書類が届くんですよね?」

というものです。

 

これは大きな間違いです。

待っていても税務署から「あなたの相続税はこれだけです、払ってくださいね」といった連絡はありません。

 

もし税務署から連絡があるとすれば、すでに申告期限を過ぎていて

「あなたは相続税の申告ができていません。すぐに申告して納税しなさい。さもなければペナルティを加算しますよ」といった連絡でしょう。

 

「相続税についてのお尋ね」という内容で財産を記入する書類が届く場合がありますが、それはあくまで「お尋ね」です。

相続税の基礎控除を超えるようであれば、必ず正式に「相続税の申告書」を作成し、提出しましょう。

 

2.相続税の計算を自分でする4つのステップ(概要)

相続税の計算は複雑ですが、相続税に関連する書籍やインターネット等で申告の方法を調べてご自身で申告できると、税理士に報酬を払わずに済みます。

 

ここでは、相続税申告を自分でするために知っておきたい計算の概要をご紹介します。

 

相続税は「〇〇が亡くなり、相続財産がいくらで、その財産額に対していくらかかります」という計算をし、申告し、納税します。

 

計算に必要なステップは以下の通りです。

①相続財産額を計算する(マイナスの財産はプラスの財産から引ける)
 ※不動産や自動車、株式の評価額を出す

②基礎控除額を計算する
(※①が②を上回る場合、相続税申告が必要です)

③基礎控除を上回った金額を法定相続分で分配し、各相続人の相続税を出す

④各相続人の相続税が出たら、合算して、各相続人が取得する実際の相続財産の割合に基づき案分する

 

 

国税庁によると、相続税申告の8割強が税理士による申告だそうです。

それほど計算が複雑で難しいものです。

当センターでも、申告のサポートはもちろん、必要であれば概算のお手伝いもさせていただきます。

まずはぜひご相談ください。

 

3.自分で申告する際は控除の適用漏れに注意すること!

相続税の申告において、様々な控除があります。

知らずに申告してしまうとことがないように、特に重きを置きたい控除を3つご紹介します。

 

3-1.配偶者の税額の軽減

配偶者に対する相続税額の軽減とは、被相続人の配偶者が実際に取得した遺産額が、

  • 1億6,000万円か
  • 配偶者の法定相続分か

どちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかからないというものです。

 

配偶者は、被相続人の財産の形成に大きく寄与していると考えられるため、極力相続税がかからないようこの制度が設けられています。

 

ただし、相続税が軽減されるからといってむやみにこの制度を最大限使ってしまうと、次に配偶者が亡くなった際の相続時に、多額の相続税が生じるケースもあります

 

この制度をどの程度活用するかによって有利不利が生じるため、慎重な判断が必要です。

 

3-2.未成年者控除

未成年者控除とは、相続人が未成年者(※2)であった場合に、相続税の額から一定額を控除することができる制度です。

(※2)2022年4月1日以降は18歳未満が対象となります。

 

さらに、その未成年者の相続税額が少なかったために相続税額から控除できなかった金額については、その未成年者の扶養義務者の相続税の額からも控除することができます。

 

3-3.障害者控除

障害者控除とは、相続人が障害者の場合には、相続税の額から一定額を控除することができる制度です。

 

障害の等級によって控除できる金額は異なりますが、未成年者控除と同様に相続税の額を減らす効果が期待できます。

 

 

これらの控除の適用漏れがあると、相続税を多く払ってしまうことになり、その結果「税理士に報酬を払って申告した方が安かった」ということも起きかねません

 

ぜひ、財産額で申告書をご自身で作成できるかを判断するのではなく、財産の内容によって申告書を作成できるか判断されることをお勧めします。

 

4.自分で申告する際のリスクをしっかりと把握すること

相続税の申告を自分でする場合のリスクとしては、「税務調査の対象になる可能性が高まる」と言われています。

 

相続税の申告書の表紙ともいえる様式「相続税の申告書 第1表」の末尾には、申告書の作成に関与した税理士の署名欄があります。

 

「相続税の申告書 第1表」の末尾には、申告書の作成に関与した税理士の署名欄があります

 

つまり、税務署側は「この申告書は自力で作成したのか、税理士と作成したのか」一目でわかるということです。

 

もちろん、税理士が関与して申告したとしても、税務調査が入ることはあります。

ですが、税務調査が入ったおよそ85%の人が、申告漏れ等の指摘を受けています。

 

自分で申告すること自体可能ですが、作成にかかる手間や時間、わからないことに取り組むストレス、そして上記のようなリスクを踏まえて丁寧に申告書を作成する必要があります

 

5.まとめ

相続税の申告書は自分でも作成できますが、

  • 各財産額の計算(特に不動産の評価や未上場株式の評価)
  • 各特例や控除の計算

など専門知識が必要なことも多々あるため、相続税申告の8割強が「税理士が作成した申告書」であることが実態です。

 

この記事は、相続税計算の概要です。

繰り返しになりますが、ぜひ「申告書を作成できるか」ではなく、「財産の内容によって正しく計算/作成できるか」という視点で税理士の力を借りるかどうか判断されることをお勧めします

 

当センターには、相続税に特化した税理士も多数在籍しております。

相続税の申告でお困りの際は、ぜひお問い合わせください。

 

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この記事を執筆した専門家

この記事を執筆した専門家 滝 亮史
  • 税理士

滝 亮史

Ryoji Taki

近畿税理士会 東支部 第107863号
大阪府中小企業診断士会 第411767号

相続税申告、生前対策に強い税理士、中小企業診断士。大手税理士法人での経験を活かし、”今”だけでなく”次の相続”を見据えたベストな方法をご提案する。CISコンサルティング税理士法人、CISコンサルティング株式会社の代表税理士。

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