- 孤独死の連絡を受けた時、まず何をするべきなのか
- 孤独死だからこその流れで進めるべき相続手続きの順番
- 相続する場合の手続きの方法と自宅の処分の注意点
- 相続放棄をする場合の期限や荷物の処分などについて
「身の回りで孤独死が発生し、急に自分がその相続人になってしまった」というご相談は、実際に当センターでもよくお受けします。
孤独死という出来事自体が昨今の日本の社会問題になってきていますが、「孤独死した人が遠い親戚で、想像もしていなかったけど自分が相続人になったみたいだ」と、突然連絡を受けて慌てる人が増えているのも現状です。
孤独死した人の相続人になって困惑する理由は、
- 自分が相続人になると想定していないほどその故人との繋がりが薄い
- どういった手続きが必要になるのか把握するのが難しい
からです。
この記事では「孤独死した人の相続人になった」という場面に特化して、どのように手続きを進めていけばよいか、実際のご相談を多数経験してきた当センターの専門家が詳しく解説します。
孤独死の相続人になるということは、誰にでも起こりうる身近なことです。
いざというときに、ぜひお役立てください。
目次【本ページの内容】
1.孤独死は警察や役所から突然連絡が来る
孤独死が発生したことを知っているということは、どこかから、また誰かからあなたに連絡があったはずです。
(もちろん、現地を訪ねた際に異変に気付き、自分から警察に連絡するというケースもあります)
孤独死の連絡を受けるパターンは、主に以下の4つです。
- 警察から連絡を受ける
- 役所から連絡を受ける
- 他の相続人から連絡を受ける
- 相続人ではない人(近所の人など)から連絡を受ける
どのパターンで連絡を受けたかによって、その後の自分の立ち位置や手続きの進め方が変わってきます。
ここではその中でも特に多い
- 警察から連絡を受けるパターン
- 役所から連絡を受けるパターン
の2つについて解説します。
1-1.警察から孤独死の連絡を受けるパターン
警察から「〇〇さんの親族の方ですか?実はご自宅で…」と電話を受けるパターンです。
なぜ連絡先がわかるのかというと、警察も当然家族や親族を探して状況を報告する必要があります。
職権などを活用して連絡先を割り出し、近親者であるあなたへ連絡してきたということです。
孤独死について、警察から相続人へ連絡が入るまでの流れは、大まかに以下の通りです。
- 警察に連絡が入る(近所の方、関係のある方などが不審に思って)
- 警察が現地に立ち入って状況を確認する
- 死亡を確認する
- 司法解剖等により身元や死因の調査が行われる
- ご家族、親族に連絡するために近親者の調査が行われる
- 警察から相続人に連絡が入る
警察から連絡を受けて孤独死を知った人は、主に上記の流れで連絡に至ったということになります。
突然の連絡に驚かれると思いますが、連絡を受けた際はひとまず、
- 誰の件か
- 今後の主な流れ
を確認するようにしましょう。
1-2.役所から孤独死の連絡を受けるパターン
警察ではなく、役所から孤独死の連絡を受けるパターンもあります。
例えば、
- 亡くなった人の親族が見つからない
- 親族が見つかってもその人が遺体の引き取りを拒否した
このような場合、亡くなった人の住所地の自治体が遺体を引き取り、火葬や埋葬をすることがあります。
その後、役所から相続人に対して連絡が入ります。
他にも、最期まで面倒を見ていたケースワーカーさん等が発見し、役所に報告後、役所から連絡を受けるような場合も考えられます。
役所は様々な手続きの窓口です。
何かしらの報告が役所に入り、そこから役所が相続人に連絡するという流れになります。
役所から連絡を受けた場合は、
- なぜ自分に連絡が来たのか
- どういう状況なのか
- 自分はこれから何をすれば良いのか
を確認しましょう。
どのようなパターンであれ、孤独死の連絡を受けた人は、突然の連絡に何から手をつけてよいのかわからず焦るばかりかと思います。
すべてが突然のことで困惑されるかもしれませんが、まずは最初の一報で状況を確認し、その後の手続きをひとつひとつ進めていきましょう。
2.孤独死の相続で急いでやるべき3つのこと
孤独死した人の相続人になったからといって、相続手続きは通常と変わりありません。
とはいえ、孤独死した人の相続手続きが難航するのは、その人の交友関係や財産状況など見当もつかないことが多いからです。
そこで、ここでは相続人であるあなたが
- 遺産相続にあたってまず何をやるべきなのか
- 孤独死だからこその手続きの進め方
について解説していきます。
遺産を相続するかどうかを決めるために、まず確認するべきことは以下の3つです。
- ほかに相続人はいるのか、いないのか
- どのようなプラスの財産(預貯金、証券、不動産等)があるのか
- マイナスの財産(借金やローン等)があるのか
順番に説明していきます。
(※故人との関係性は様々であるため、あくまで一例としてご覧ください。)
2-1.孤独死した人の相続人を確定する
孤独死の連絡が来た時点で、自分が関係者であることはわかりましたね。
ただ、それは「関係者」であって、もしかすると「相続人」ではないかもしれません。
警察や役所も当然一番近しい関係の人を探して連絡するはずですので、あなた自身が相続人である可能性は高いです。
でも、あなた「以外」にも相続人がいる可能性は十分にあります。
そこで、孤独死の連絡を受けて真っ先にすべきことは、「だれが相続人なのか」を確定することです。
家の片付け、相続放棄などいろいろ考えることがたくさんあると思いますが、そもそも相続人でなければ全く考える必要のないことですし、他に相続人がいるのであれば、勝手に処分などすることでトラブルに発展する可能性もあります。
だからこそ、まずは相続人の確定が大切なのです。
孤独死という状況で考えると、普段から連絡を取ることもなく、場合によっては何年も会っていないという方もおられるかもしれません。
それであれば、たとえば家族に伝えていなかっただけで配偶者がいたり、離婚歴があって子がいたり、連絡がつかないだけで存命の兄弟姉妹がいたり、想像もしていなかったところに相続人がいるかもしれません。
そのためには、まずは亡くなった人の戸籍謄本(除籍謄本)を取得し、そこから順に戸籍を遡っていくことで、その亡くなった人の今までの婚姻歴や戸籍関係がわかり、相続人を確定することができます。
孤独死した人が叔父や叔母だった場合、その家族関係がわからない方も多いと思います。
でも大丈夫です。
お伝えした通り、死亡の戸籍から順に遡っていくことで、最終的に全ての相続人を確認することができます。
普段見る機会のほとんどない戸籍を集めるのはすごく大変だと思われるかもしれませんが、その方法や必要な戸籍については当センター運営の相続情報サイトで詳しく解説していますので、そちらをご覧いただければと思います。
>>【戸籍謄本まるわかり】相続手続きに必要な戸籍をケース別に徹底解説(まごころ相続コンシェルジュ)
2-2.プラスの財産(預金や不動産など)を調査する
財産にはプラスの財産とマイナスの財産がありますが、プラスの財産とは
- 預貯金
- 不動産
- 株
- 車
- 生命保険
など、いわゆる「お金」になるものです。
孤独死の相続において、それら財産を把握する手掛かりは遺留品(いりゅうひん)と現場(自宅内)に遺された物です。
遺留品という言葉はご存知かと思いますが、「人の死後に残された物品」という意味で、孤独死の場合であれば警察が現場に立ち入った際に重要なものとして持ち帰って保管していることが多いです。
具体的には、
- 銀行の通帳
- 年金手帳
- 現金
- 車の免許証
などであることがほとんどで、これら遺留品は遺体の引き取りの際に併せて受け取ることになります。
まずはこの遺留品を頼りに、財産の調査、そして手続きを進めていくことになります。
しかし、警察から受け取る遺留品が財産のすべてではありません。
先ほどお伝えしましたが、プラスの財産には不動産や車、株、生命保険などもあります。
そして、それらの資料となる不動産の権利証、証券会社からの取引報告書、生命保険の証書などは、自宅に残されたままであることがほとんどです。
つまり、自ら現地(亡くなった人の住居)へ赴き、そこから手探りで見つけていく必要があるということです。
書類として目につく形で残されていればよいですが、中には例えば
- 何気ないタオルが、実は生命保険会社の粗品だった
- たった1本のボールペンが、実は定期預金をした際にプレゼントされた銀行のものだった
ということも十分にあり得ます。
「そんな細かなところまで?」と思われるかもしれませんが、全く状況がわからない以上、見つけた手掛かりのところに問い合わせをしてみたら多額の預金(または借金)があったという可能性もあります。
今までの当センターの経験では、孤独死された場合のご自宅の物量はすごいです。
あまり良い言葉ではありませんが、最近よくテレビでも使われる「ゴミ屋敷」という言葉が当てはまるような状況も多いです。
推測でしかありませんが、やはり最期は荷物を片付ける気力もなくなり、自分の行動範囲も極端に狭くなり、それ以外のところは全てゴミが溜まってしまうということかもしれません。
(関連ページ)
【閲覧注意】孤独死を他人事にはできない7つの理由(まごころ相続コンシェルジュ)
そのような孤独死の現場に足を運ぶのはなかなか勇気がいるかもしれませんが、財産状況を把握するためには必ずやるべきことの一つです。
(当センターでしたらカギをお預かりし、代わりに現地に入って捜索するような対応もしております。)
また、現地に行った際は郵便受けにも目を光らせておく必要があります。
何かしらの請求が届いたり、証券会社から3か月に一度の取引報告書が届いたり、生命保険の契約内容通知が届いたりすることがあります。
遠方であれば大変かもしれませんが、近所の人にお願いするなどして定期的に確認するようにしましょう。
このように、かなり地道な作業になりますが、見つけたものを整理しながらプラスの財産を把握していきます。
【※相続放棄の期限に注意※】
相続放棄をする場合は、3か月以内に家庭裁判所への申し立てが必要となります。つまり、財産調査にあまりに時間をかけすぎると、この相続放棄の期限を過ぎてしまう可能性があります。
プラスの財産に限らず、(次に紹介する)マイナスの財産も含めて全体像をざっくりでも把握できれば、自身が相続するのか、相続放棄するのか判断できると思います。
そのためにも、まずは3か月以内に財産調査を終えて相続する・しないを決めるというスケジュール感で動きましょう。
2-3.マイナスの財産(借金やローンなど)を調査する
マイナスの財産とは、
- 借金
- ローン
- 借り入れ
- クレジットカードなどの未払金
など、いわゆる「借金」です。
マイナスの財産の調査方法も、基本的にプラスの財産と同じです。
手掛かりがあるとすれば、
- 郵便で届いた毎月の支払明細
- 消費者金融からの借り入れに使っていた専用カード
- 定期的な引き落としの履歴がある通帳
などから把握することができます。
しかし、仮にこのような「借り入れの事実がある」としても、実際「どれくらいの返済が残っているのか」といった情報を把握することは難しいです。
そのため、まずはすぐに問い合わせをして、死亡の連絡と残債を確認するとよいでしょう。
(※個人情報に関することなので、開示してもらえないこともあります)
とはいえ、まずは支払先に死亡の連絡を入れることで、滞納のリスクを避けることができますので、必ず連絡は入れるようにしましょう。
財産調査の手段①債務調査
個人信用情報の照会をすることで、ある程度の情報を一覧で確認することができます。
消費者金融や金融機関での借り入れはもちろん、クレジットカードの残債、携帯電話の割賦契約なども確認することができるため、「借金がありそうだな」と不安な場合は、ぜひ当センターへご相談ください。
財産調査の手段②現地での荷物の整理
遺品整理業者にお願いすることで自宅内の書類を一気に整理する方法ですが、遺品整理の専門会社であっても、「相続において」どの書類が重要なのかを見極めるのは非常に難しく、少しでも早く片付けようとどんどん処分をされてしまうことも多いようです。
(ご自身で自宅を整理される場合でも、相続に必要な書類かどうかを判断するのは難しいことが多いはずです)
自宅の中には、一度捨ててしまうと取り返しがつかないような重要な書類(各種証書や遺言書等)がある可能性もあります。
もし遺品整理の専門会社に依頼する場合は、当センターのような遺産相続手続き代行センターと連携が取れている業者に相談されることをお勧めします。
3.【相続すると決めた人】が絶対にやっておくべき2つのこと
2章|孤独死の相続で急いでやるべき3つのことでご紹介した、相続人と相続財産(プラス/マイナス)の調査を終えると、それらの結果を踏まえ、自身が相続するのか、相続放棄するのかを決める必要があります。
一般的に、
- プラスの財産が多い場合は相続する
- マイナスの財産が多い場合は相続しない
と決断される人が多いです。
(余程の思い入れや引き継ぎたいものがある場合はマイナスの場合でも相続されますが、孤独死という時点でそこまで関係の深い付き合いをされていない場合が多いです)
いずれにせよ、相続人であるあなた自身が総合的に判断する必要があります。
まずここでは、相続すると決めた人向けに、絶対にやっておくべき2つのことをご紹介します。
3-1.孤独死した人の住居をどうするのか決める
必ずしも自宅で亡くなるとは限りませんが、ほとんどの方がどこかに住まいをお持ちだと思います。
それは賃貸住宅のこともあれば持ち家のこともあります。
それぞれのケースに分けて、どのように行動すべきかお伝えします。
①住居が賃貸だった場合
早急に片づけ、退去の手続きをしない限り、賃料や共益費が継続して発生し続けます。
できるだけ早く退去の手続きをし、余計な費用が発生しないようにしましょう。
※家の片づけがなかなかできず、退去が遅れてこの先1~2か月の家賃を支払うのであれば、多少費用をかけてでも遺産整理の専門業者に依頼した方が、結果的に良いこともあり得ます。
②住居が持ち家だった場合
この場合、
- 相続人の誰かがここに住むのか
- 売却するのか
を検討する必要があります。
相続人の誰かが住む場合は、名義変更するより前から住むことも可能ですが、固定資産税を誰が払うのかなどでトラブルにならないよう、できるだけ早く名義変更の手続きをするようにしましょう。
売却する場合は、「そもそもその不動産が売れるのか」をよく検討する必要があります。
なぜなら、孤独死された家はいわゆる「事故物件」という扱いになり、心理的瑕疵といわれる「目に見えない欠陥」がある物件として告知義務が生じる可能性があるからです。
たとえばあなたが物件を探しているとして、内覧をしているときに「実はこの家は孤独死された家でして…」と話を聞いた場合、いかがでしょうか?
- 募集されている金額でそのまま買いますか?
- 少しでも金額を下げて欲しいと交渉しますか?
- それとも購入を辞めますか?
決して事件があったわけではありませんが、やはり心理的なハードルがあるのが孤独死の物件です。
つまり孤独死の物件については、なかなか売れなかったり、相場よりも値段が大きく下がったりするケースが多いのが現実です。
不動産の売買は売主と買主の合意があって初めて成立しますので、自分がどれだけ価値を感じたり売りたいとか売れるとか思っていても、手を上げる人がいなければそのまま保有し続けなければなりません。
仮にそのまま放置してしまうと、放火や出火による火災のリスクがあったり草木が伸びて近隣トラブルの原因になったり、後々想像もしなかった出費が増えることもあります。
このように、孤独死した不動産の売却は一般的な不動産の売却と注意すべき点が異なりますので、そういうった物件の取り扱いに強い不動産業者に相談するようにしましょう。
【相続不動産の売却は”絶対に”専門家へ】
当センターではこのような孤独死の物件も含め、リスクの高い物件でも、売主(相続人)に極力リスクのない方法での売却をサポートしてきており、売れないだろうと思われた物件も数多く成約に至った実績があります。
(遺品整理もせず、欲しい荷物だけ取り出してそのまま売却したこともあります)
当センターには相続不動産の売却に強いエキスパートがおり、司法書士や弁護士らの国家資格者のバックアップがありますので、まずは一度ご相談ください。
3-2.相続人が複数いる場合は遺産分割協議書を作成する
2-1章|孤独死した人の相続人を確定するで相続人の確定をしましたが、その結果、もし相続人が自分一人だけだとわかった場合は、相続財産はすべてあなたが受け継ぐことになるため、あなた自身で各手続きを進めていくことになります。
(むしろ、誰にも邪魔されることなく、遺産を分けることもありません)
ですが、もし相続人が自分一人ではなく複数いる場合は、相続財産について
- だれが(人)
- なにを(物)
- どれだけ(数・量)
相続するのかを決める必要があり、その決まった内容をしっかり書面に残しておいた方が後々のトラブル防止につながります。
この話し合いのことを「遺産分割協議」といい、相続人全員が合意し、署名捺印して内容をまとめたものを「遺産分割協議書」といいます。
遺産分割協議書は、当該相続に関してのトラブル防止はもちろん、手続きによっては必要書類として提出を求められることもあります。
相続人が2人以上の場合は、必ず作成しておくことをお勧めします。
(遺言書がない場合、不動産や自動車の名義変更などでは遺産分割協議書は必須です)
4.【相続放棄すると決めた人】が知っておくべき重要な3つのポイント
それでは、相続しない(相続放棄する)と決めた場合はどうするのかというと、
- 家庭裁判所で相続放棄の申述をする
- 遺産分割協議書で相続しないことを宣言する
のいずれかを選択することになります。
どちらも一見すると同じように思えますが、この2つの放棄は、法律上意味合いが全く異なります。
違いを簡単に説明すると、下記の通りです。
①家庭裁判所での相続放棄の申述
相続人としての地位を失う(そもそも相続人ではなくなる)
↓
第三者、対外的にも「相続人ではない」ことを主張できる!
②遺産分割協議書で相続しないことを宣言する
相続人全員での話し合いの結果、「私は何も相続しません」という相続人の間での合意
↓
第三者、対外的には「相続人である」ことに変わりはない!
なかなか違いがわかりにくいかもしれませんが、①家庭裁判所の相続放棄であれば「相続人としての地位を失う」ことになりますので、言い換えると部外者の状況になり、プラスやマイナスどころか、一切相続に関わることがなくなります。
(※厳密には、相続放棄した後も故人の財産について自己の財産におけるのと同一の管理を継続しなければならないという義務が残りますが)
それに対して②遺産分割協議書で相続しないことを証明する場合、その合意はあくまでも相続人の間だけでの合意であり、第三者に対しては主張できません。
ですので、仮に借金があった場合、その借金の請求は遺産分割協議書で相続しないことを宣言した人にも届くことになります。
「私は相続放棄しています」と回答しても聞き入れてもらえないことがほとんどですので、もし多額の借金があるからというという理由で相続放棄をする場合は、必ず家庭裁判所で相続放棄するようにしてください。
反対に、「特に負債もない、借金もない、財産は必ずプラスのはず、それでも自分は相続する意思はないので相続放棄したい」ということであれば、遺産分割協議書で相続しない方法を選択でも特に問題はないかと思います。
ここでは家庭裁判所で相続放棄をすることを決めた人が知っておくべき重要な3つのポイントを解説していきます。
なお、相続放棄しようと思っているが、本当に相続放棄をすべきかどうかがわからず悩んでいる方はぜひ下記記事をご覧ください。
4-1.相続放棄の期限は”相続の開始を知ってから”3か月以内
2-2章でもお伝えしましたが、家庭裁判所での相続放棄には期限があり、それは民法で明確に定められています(民法915条)。
民法915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」の考え方はいくつかあるのですが、一番確実なのは、「死亡日から3か月以内」です。
間違いなく、この期限が最初に到来することになるため、まずはこの期限を頭に入れておきましょう。
しかし、孤独死の場合は少々状況が異なり、死亡日当日に死亡の事実を知る可能性は極めて低いです。
つまり「死亡日=自己のために相続の開始があったことを知った時」にならない可能性が高いです。
そこで考えられる期限としては、「死亡の連絡を受けた日から3か月」になります。
孤独死の場合、相続人にどのように連絡がいくのかは1章でご説明しましたが、2つのケースで相続開始日の考え方と証拠の残し方をご紹介します。
①警察や役所からの「電話」で孤独死の事実を知った場合
突然かかってきた電話ではじめて孤独死があったことを聞くはずです。
その電話のあった日をメモし、スマートフォンで着信した場合は、その着信履歴をスクリーンショットで残しておくのも一つの方法です。
電話をかけてきた人の名前、時間、話の内容などもあると尚よいでしょう。
②役所からの郵便で知った場合
電話がつながらなかったり電話番号がわからない場合などは、郵便で孤独死の連絡が届くことがあります。
その場合は消印が重要になりますので、手紙が入っていた封筒を捨てずに残しておきましょう。
また、仮に期限が分かったとしても、3か月以内に「私は相続放棄します!」と宣言するだけでは放棄はできません。
この3か月以内に、必要書類をそろえて裁判所に申述する必要があります。
申述するためには自分が相続人であることが大前提ですので、自分と亡くなった人の関係(相続関係)を証明するための戸籍が必要です。
場合によっては、相続順位が上位だった人の死亡が分かる戸籍や相続放棄があったことを証明する書類も必要になります。
(相続放棄があったことを証明する書類が必要な理由は、相続権が亡くなった人から見て子→両親・祖父母→兄弟姉妹の順に移るためです)
家族関係などによっては収集する戸籍謄本や改正原戸籍の数も多くなり、必要な分を揃えるだけでも数週間~1・2か月程度かかってしまうこともあります。
戸籍による相続関係の証明は、決して単純な作業ではありません。
つまり、いま相続放棄しようと思っても、今日明日すぐに手続きができるわけではないということです。
相続放棄の申述書には財産を記載する箇所もありますので、ある程度でも財産や債務を把握しておくことも必要です。
(※全く不明の場合でも受理される可能性はあります、ご安心ください)
これら一連の準備を経て、3か月以内に家庭裁判所への申し立てをすることになります。
このことを念頭に、相続放棄すると決めた場合はできるだけ早く行動に移すようにしましょう。
【相続放棄の期限の「開始日」に注意】
その他にも、期限の「開始日」の考え方はいろいろありますが、より確実なもの(期限が早く来るもの)をお伝えしています。
この相続放棄の期限の考え方について、「こういう場合はどうだろう?」と気になる場合は、ぜひご相談ください。
4-2.相続放棄を決めたら手続きに一切関与しないこと
すでにお伝えしたとおり、相続放棄というのは「相続人としての地位を失う(相続人ではなくなる)」ことです。
そのため、電気や水道の解約など直接財産に関わらない手続きであっても、良かれと思って進めたことが「相続する意思がある」と判断されてしまうかもしれません。
相続人ではない、要は第三者が勝手に手続きをしている状況になるわけです。
もしくは、まだ相続放棄をする前の段階であれば、これから第三者になる予定の人が、勝手に手続きをしているわけです。
せっかく相続放棄の決断をしたにも関わらず、自身の些細な行動によって、相続放棄できなくなる可能性があります。
そのため、家庭裁判所での相続放棄を検討、または決断されている場合は、基本的には一切手続きに関与しない方が賢明です。
(請求書や支払いの催促が届いて気になる場合は、先方に相続放棄する意思を伝えれば、たいていの場合は状況を理解してもらえることが多いです)
4-3.相続放棄しても生命保険は受け取れる場合がある
直前の4-2章で「相続放棄する場合は一切手続きをしないこと」とお伝えしましたが、例外があります。
それは、生命保険の死亡保険金受取人になっている場合の手続きです。
保険契約に伴う死亡保険金は、指定された受取人に対して支払われるものです(指定された受取人のみが請求できるもの)。
つまり、受取人として指定された人の固有の財産になるため、たとえ相続放棄をしても(相続人としての地位を失ったとしても)受け取ることが可能なのです。
亡くなった人の住居から生命保険の証書などが見つかった場合は、まずその内容についてしっかり確認し、受け取れるものは受け取っていただいても、相続放棄に影響しない可能性が高いです。
(※保険契約の個別の内容による場合もありますので、手続きの前には必ず保険会社の担当者に相続放棄する旨を伝え、それでも受け取れるかどうかの確認はしておきましょう)
5.まとめ
孤独死の相続について、その連絡を受けたときから順にやるべきことをお伝えしました。
孤独死した人の相続人になったとしても、手続きは通常の相続手続きと何ら変わりはありません。
まず相続人を確定し、プラスとマイナスの財産を洗い出し、自身が相続するのかしないのかを決めて、それに応じて手続きをしていくことになります。
とはいえ、他の手続きと状況が違うのは、自分が相続人になると想定していないほど故人と関りがなく、それゆえ相続関係や財産状況がまったく見えていないところからスタートすることです。
状況が見えないために不安になる人も多く、当センターに寄せられるご相談の中にも「孤独死した相続人になり、どうしてよいのか全くわかりません…」という本当に辛い状況をお話されることもあります。
直接当センターにご相談いただいても結構ですし、まずはこの記事をご覧いただき、少しでも参考に手続きを進めていただければと思います。
(当センターでは、信頼のおける遺品整理業者とも連携しており、現地で書類の捜索などにも対応可能です)