公証役場で公正証書遺言を作成する「公正証書遺言」について
- 公正証書遺言の作成費用は、遺言の内容(載せる金額)によって変わる
- かかる費用は、主に「公証人手数料」と「実費」
- 公正証書遺言の作成を、専門家にサポートしてもらうこともできる
公正証書遺言を作成しようと思ったときに、「どのくらいの費用がかかるのだろうか」という点は、特に気になる点だと思います。
そのような方のために、この記事では、公証役場で公正証書遺言を作成する際にかかる費用を解説していきます。
作成前に、ぜひお役立てください。
目次【本ページの内容】
1.公正証書遺言にかかる費用は公証人手数料と実費代等
公正証書遺言は「遺言の内容」によって金額が変わります。
費用には大きく分けて3つあり、その合計額が費用として発生します。
それぞれ解説していきます。
1-1.公証人手数料
まず公証人手数料は、公証人手数料令という法律で下記のように決められています。(つまり定額です)
(公証人手数料令第9条別表)
目的の価格 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
例えば「不動産をAに相続させる」という内容の遺言であれば、不動産の評価額が「目的の価格」になります。
※目的の価格とは
遺言をする目的の財産の価格になります。
不動産の評価額が1,500万円だった場合は、手数料は23,000円になります。
(評価額は固定資産税納税通知書や名寄帳などで確認できます)
そしてこの「目的の価格」は、「遺言で財産をもらう人」ごとによって計算していきます。
例えば「不動産(評価額1,500万円)をAに相続させる」と「銀行預金800万円をBに相続させる」という内容の遺言だった場合、手数料は
- 不動産(1,500万円)をAに→手数料23,000円
- 銀行預金800万円をBに →手数料17,000円
というように、それぞれ金額がかかりますので、
23,000円+17,000円=40,000円
が手数料になります。
そして、全体の財産額が1億円以下であれば遺言加算として11,000円加算されます。
よってこの場合、40,000円+11,000円=51,000円が公証人手数料となります。
つまり、公証人手数料の最小値は、「目的の価格」が100万円以下の場合の手数料5,000円
+(それに加えて)
遺言加算として11,000円を足した16,000円が少なくともかかるということになります。
また、遺言では祭祀承継者を指定することもできます。
(※祭祀承継者とは、お墓や仏壇を引継ぐ人のことです。)
公正証書で祭祀承継者を指定する場合は、定額でプラス11,000円かかります。
参考条文
(法律行為に係る証書の作成の手数料の原則)第九条 法律行為に係る証書の作成についての手数料の額は、この政令に特別の定めがある場合を除き、別表の中欄に掲げる法律行為の目的の価額の区分に応じ、同表の下欄に定めるとおりとする。
(引用元:公証人手数料令)
1-2.実費(公正証書遺言正本・謄本代)
公証人手数料以外にも、公正証書遺言の作成でかかってくる費用が、公正証書正本・謄本代です。
公正証書遺言を作成する際に、通常は、原本・正本・謄本が発行されます。
原本は公証役場にて保管され、遺言者(遺言をする人)には正本と謄本が渡されます。
この正本と謄本の1ページにつき250円が実費として発生します。
そのため、例えば公正証書遺言が5ページある場合、
250円×5ページ=1,250円
これが正本と謄本とあるため、1,250円×2=2,500円
が実費としてかかります。
1-3.日当と旅費(公証人に出張してもらう場合)
通常、公正証書を作成するときは、公証役場に赴いて公証人の面前で作成をします。
しかし、入院中等で公証役場に足を運べない人のために、公証人に、自宅や病院まで出張してもらうこともできます。
その際に、出張費用として
- 日当(4時間までで10,000円)
- 交通費(実費計算)
がかかります。
(4時間を超えると、1日分として20,000円になります)
参考条文
(日当及び旅費)第四十三条 公証人は、その職務を執行するために出張したときは、次に掲げる日当及び旅費を受けることができる。
一 日当 一日につき二万円。ただし、四時間以内のときは、一万円
二 旅費 交通に要する実費の額及び宿泊を要する場合にあっては、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二十五年法律第百十四号)第二十一条第一項の規定により一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)第六条第一項第十一号に規定する指定職俸給表の適用を受ける職員に支給される宿泊料に相当する額
(引用元:公証人手数料令)
2.専門家の「公正証書遺言の作成サポート」を使った場合の費用
公正証書遺言は、遺言をする人が公証人の面前で遺言の内容を口頭で伝えることで作成します。
そのため、公正証書遺言を作成する当日までに、
- 遺言書の原案
- 不動産の資料、預貯金の通帳や残高証明書など資料
- 遺言者(遺言する人)や受遺者(遺言で財産をもらう人)の戸籍や住民票
などを準備して、公証人と遺言の内容をすり合わせていきます。
(公正証書遺言を作るには、いきなり公証役場に行ってすぐ作れるというわけではなく、どういう内容の遺言にするのか、予め準備や相談をする必要があります)※当日は証人も必要になります。
そこで、弁護士や行政書士など、専門家の「公正証書遺言の作成サポート」を依頼することで、書類の取得や公証人とのやり取りを代わってもらえ、自身の負担を減らすことができます。
また「誰に、何を、どうしたいのか」などをヒアリングしてもらうことで、遺言の作成に関してのサポートもしてもらえます。
この作成サポートサービスの費用に関しては、各事務所によって金額はまちまちですが、概ね10万円前後(行政書士の場合)が多いようです。
また、作成のサポートをした弁護士や行政書士に「遺言執行者(遺言の内容を実現してくれる権限を持った人)」を依頼することもできるため、相続が始まったときに、遺言通り確実に不動産の名義変更や銀行の解約手続きなどを進めてもらうこともできます。
公正証書の費用の中で、遺言執行者を指定することに対しては公証人手数料はかかりません。そのため、遺言内容の手続きをしてくれる人がいる場合は、なるべく指定しておくとよいでしょう。
3.まとめ
自筆証書遺言と違って、公正証書遺言は作成自体に費用がかかりますが、相続が始まった際に、家庭裁判所での検認が不要で、すぐに手続きを始めることができます。
また、公証人が関与するため、法的にも無効になりにくいのがメリットです。
遺されていくご家族や大切な人のためにも、ぜひ公正証書遺言をご活用ください。
当センターにも、遺言書に精通した専門家が多数在籍しておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。