相続権の範囲に関するご相談です。
今回は、
- 婿養子に出ている
- 戸籍から抜けている
- 名字が変わっている
というところがポイントかと思います。
目次【本ページの内容】
1.判断基準は「実の子であるかどうか」
先に結論から申しますと、相続権は「あります」。
それどころか、他の兄弟お2人と同じ割合で子3人がそれぞれ3分の1の割合で権利を有します。
つまり、婿養子に出ていようが、戸籍から抜けていようが、名字が変わっていようが、「母親の実の子」であることに変わりはありませんので、相続分は同じ割合になるということです。
仮に婿養子に出ていることが理由で相続分が異なる(もしくは相続権がない)のであれば、女性は結婚によって夫の戸籍に入る(いわゆる「入籍」です)ことが多いので、多くの女性は結婚をすれば損をするようなことになってしまいます。
まさかそんなはずはありませんので、戸籍に残っていても、戸籍を抜けていても、相続権に影響するのは「実の子かどうか」ということです。
2.養子縁組をした場合
ここで一つ関連知識としまして、「養子縁組」をした場合はどうなるのかをお伝えしておきます。
今回のご相談内容に少し追加する形で考えてみますと、長男さんにお子様がおられ(お母様からみれば孫にあたります)、そのお子様がお母様と養子縁組をした場合、お子様には果たして相続権は生じるのでしょうか?
つまり、本来であれば祖母と孫にあたる関係になります。
結論は、YESです。
養子縁組をすると、その2人の間には血縁関係とは無関係に親子関係が生じることになります。
極端に言えば孫でも親戚でもなんでもないご近所さんと養子縁組をした場合でも、その2人の間には当然ながら血縁関係はありませんが、親子関係が生じることになります。
親子関係が生じれば当然そこには「相続権」が生じます。
よって、今回の事例に話を戻しますと、母から見ると実子が3人+養子縁組によって親子になった孫1人の計4人が等しく「子」として相続権を得ることになります。
つまり、3人兄弟ではそれぞれ3分の1だった相続権が、4人の均等割りで4分の1ずつになるということです。
民法第727条(縁組による親族関係の発生)
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
3.離縁をした場合
最後にもう一点、一度養子縁組した関係を終了させる、すなわち親子関係を断つことはできるのでしょうか?
こちらも民法で定められております。
民法第729条(離縁による親族関係の終了)
養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。
「離縁」という言葉が出てきましたが、「縁組」とは対になる言葉ですね。
養子縁組は役所に届け出ることによって成立しますが、離縁の届けも同じく役所にて行います。
養子縁組をした後、やっぱりその関係を解除しようと思った場合には、忘れず離縁の手続きをして下さいね。
時々「一度養子縁組したけどもう関係を断ちました」と言ってご相談されることがあるのですが、戸籍を見ると縁組みが解除されず、そのまま残っているケースが多いです。
自分の中では関係を断っているのかもしれませんが、戸籍上は変わらず「親子」になっていますので、思ってもいないところに相続権が生じる可能性もあります。
ご注意ください。
4.まとめ
- 婿養子に出ていても、他の兄弟姉妹と等しく相続権は生じる。
- 養子縁組をすれば、血縁関係のない第三者であっても親子関係になり、実の子と同じ割合で相続権が生じる。
- 一度養子縁組をすると戸籍に「養親」として記載され、口頭で解除することはできない(離縁の手続きが必要)。