- 遺産分割協議をやり直すには、「相続人全員の合意」が必要であること
- 相続人の意思と関係なく、遺産分割協議をやり直す必要があることもある
- 遺産分割協議をやり直す際に注意すべきポイント
遺産分割協議は、相続人全員の合意があって成立します。
よって、一度全員が合意した遺産分割協議も、再度「相続人全員の合意」があれば、やり直すこができます。
一方で、そもそも遺産分割協議が無効と判断された場合は、相続人の合意の有無にかかわらず、やり直しが必要になることもあります。
いずれにせよ、一度まとまった遺産分割協議をやり直すということは、そのぶん注意すべきポイントもたくさんあります。
この記事では、「遺産分割協議をやり直す」ということについて、注意点も含め詳しく解説します。
目次【本ページの内容】
1.遺産分割協議をやり直すには「相続人全員の合意」が必須!
繰り返しになりますが、遺産分割協議をやり直すには、再度「相続人全員の合意」が必要になります。
(1回目の協議でも、2回目の協議でも、遺産分割協議の成立には必ず「相続人全員が合意すること」が条件です。)
また遺産分割協議をやり直した後は、相続人全員が合意した証明として、必ず遺産分割協議書を作るようにしましょう。
2.遺産分割協議をやり直す必要があるケースとは
相続人全員の意思や合意と関係なく、遺産分割協議をやり直す必要があるケースが3つあります。
順番に解説していきます。
2-1.相続人に「遺産分割協議に参加できない人」がいた場合
遺産分割協議には相続人全員の参加が必須です。
しかし相続人の中に次に該当する人がいると、遺産分割協議をやり直す必要がある場合もあります。
①未成年者
遺産分割協議のような法律行為とみなされる手続きにおいて、未成年者が関与する場合は、通常親権者が代理人となります。
親権者、つまり父母等が未成年者に代わって協議に参加し、署名や実印の押印をすることになります。
よって、もし遺産分割協議に未成年者が参加していた場合は、注意するようにしましょう。
②認知症の人
遺産分割協議には、協議内容を理解して合意する「意思能力」が必要になります。
認知症などで「意思能力」がない場合にした遺産分割協議は、無効になる可能性があります。
認知症などで判断能力に疑問がある場合は、司法書士などの専門家に相談しましょう。
2-2.遺産分割協議内容に「詐欺/脅迫/勘違い等」があった場合
遺産分割の協議内容に、詐欺や脅迫等によるものがあると、その遺産分割協議は取り消せる場合があります。
内容に勘違いがあり、誤って署名・実印の押印をしてしまった場合も同様です。
遺産分割協議の内容を取り消された(=無効になった)場合は、遺産分割協議をやり直す必要があります。
遺産分割協議自体に期限はありませんが、詐欺等により取り消す場合は「5年以内に」という期限があるため注意しましょう。
2-3.遺産分割協議から漏れている財産があった場合
遺産分割協議が成立した後で、故人の通帳など新たな相続財産が見つかることがあります。
その場合、その財産も遺産分割協議の対象となるため、新たな相続財産も含めた遺産分割協議をする必要があります。
(新たな相続財産だけ対象にした遺産分割協議でも可)
二度手間にならないためにも、遺産分割協議をする前に、漏れている財産等がないかしっかりと調査をすることが大切です。
遺産分割協議後に、遺言書が見つかったらどうする?
協議後に遺言書が見つかった場合、本来であれば遺言書の内容が優先されます。
しかし、遺言書があっても「相続人全員の合意があれば」遺産分割協議は可能です。
(例外もあります。詳しくはこちらをご確認ください。
また、もし遺言書に記載のない相続財産がある場合は、その財産については遺産分割協議が必要となります。
3.遺産分割協議をやり直す際の3つの注意点
遺産分割協議をやり直したい場合、考慮すべき点が3つあります。
それは、すでに成立している遺産分割協議の内容で、ある程度相続手続きが進んでしまっている場合に当てはまります。
相続財産の名義変更が完了していたり、相続財産が第三者の手に渡っていたりすると、単なる「遺産分割協議のやり直し」だけでは済まないことがあります。
大きく分けて以下の3つの事態が想定されるため、遺産分割協議をやり直す際には十分に考慮するようにしましょう。
3-1.贈与税がかかる場合がある
遺産分割協議において、ある相続財産を相続人Aが取得することになったとします。
相続人Aの相続手続き後、遺産分割協議をやり直すことになり、その結果この相続財産は相続人Bが取得することになった場合、この財産は相続人Aから相続人Bに移ることになります。
遺産分割協議では「(故人から)相続人Bへ」と財産が移ると見えても、手続き上一度相続人Aにわたってしまったため、これは相続人Aから相続人Bへの贈与とみなされる可能性があります。
(そして、税務署が「贈与」と判断した場合は、(財産を受け取った)相続人Bに贈与税の申告と納税が必要となります。)
3-2.余計な費用がかかる場合がある
贈与税以外にも、余計にかかる可能性のある税金があります。
例えば、遺産分割協議をやり直す財産が不動産だった場合です。
すでに名義変更を終えた後に遺産分割協議書をやり直し、不動産を相続する人が変わった場合は、不動産の名義変更にかかる税金
- 登録免許税
(不動産などを登記する際にかかる税金です。不動産の評価額に応じて金額が決まります) - 不動産取得税
(不動産を贈与や購入したときに取得したときにかかる税金です。相続で取得したときは課税されません)
が余計にかかってしまいます。
負担する人が異なるとはいえ、相続財産に対してかかる税金は総じて増えるため、注意が必要です。
3-3.財産が第三者に渡ると取り戻せない場合がある
取得した相続財産(特に不動産など)を、相続人以外の第三者に渡してしまっていた場合、いくら遺産分割協議をやり直したとしても、その財産を取り戻すことはできません。
(簡単に言うと、すでに手に届かない所にある相続財産については、いくら相続人だからといって取り戻せないということです。)
つまり、このタイミングで遺産分割協議をやり直しても意味をなさなくなります。
このように、一度終えた遺産分割協をやり直したとしても、余計な費用がかかったり、すでに取り返しがつかなかったりすることがあります。
遺産分割協議をやり直せるとはいっても、なるべくやり直さず済むように、しっかりと話し合うようにしましょう。
4.まとめ
遺産分割協議のやり直しは、「相続人全員の合意」があれば可能です。
しかし、安易に遺産分割協議をやり直すと、余計な費用がかかったり、時には取り返せないところまで相続手続きが進んでしまっていたりすることもあるため、なるべくやり直すことのないよう注意しましょう。
そして、遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成することも大切です。
当センターでは、相続手続きにおいて、遺産分割協議書の作成も可能ですので、お気軽にご相談ください。