ご家族を亡くされた悲しみは何にも変えられないものですよね…
しかし、大切な人が旅立たれた後、ご家族はどれだけ悲しくても課せられた期限内にしなければならない手続きがたくさんあります。
また、手続きに必要とされる書類はとても多くて複雑です。
(日常生活の中では全く見ることのない書類もあります)
後の相続手続きで困らないために、準備していただきたい書類を簡単にまとめました。
ぜひご参考ください。
目次【本ページの内容】
1.相続手続きに必要な10の書類
まず、それぞれの書類が
- どのような書類で、
- 何の手続きに使うのか
- どこで取得できるのか
を把握しておくことが重要です。
また、万が一の場合に備えてコピーを用意し、いつでも提出したり確認できるように保管しておく事をお勧めいたします。
(提出してしまうと手元に原本がなくなり、再取得する時に情報がなく大変だったりしますので)
これから一つ一つの書類についてご説明しますが、どのような手続きをするかによって必要な書類は異なります。
あくまでも一般的な参考としてご覧ください。
1-1.戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
同じ戸籍に入っている全員分の情報が記載された書類を戸籍謄本といいます。
誰か特定の1人ではなく、その戸籍に入っている全員分が載ってきます。
(その戸籍にそもそも1人しか載っていないという場合もありますが)
名前や生年月日だけでなく出生日、婚姻、父母の名前、続柄などの身分関係も記載されていますが、住所は記載されていませんので注意が必要です。
戸籍謄本を取得できるのは、原則、その戸籍に記載されている人、配偶者、戸籍に記載されている人の直系親族(祖父母、父母、子、孫など)です。
委任状を用意することで第三者が発行することも不可ではありませんが、近年は個人情報の扱いが大変厳しく、戸籍が取得された時点でその本人に対して役所から通知が送られることもあります。
※本人通知制度と言い、「あなたの戸籍が第三者によって取得されましたよ、心当たりはありますか」という案内です。
(和歌山県のホームページの図がわかりやすかったので引用させていただきました、詳しくは和歌山県のホームページをご覧ください)
相続に限らず、あらゆる手続きで自身の身分を証明するものになりますが、そこに住所は記載されていませんので、いわゆる身分証明書として使用することは基本的にありません。
<戸籍謄本が必要になる手続き>
- 自動車や不動産の所有権の相続・名義変更
- 預貯金や証券口座の解約・名義変更
- 未支給年金の受け取り、遺族年金請求手続き
- 相続放棄、限定承認
- 相続税の申告など
<取得場所>
- 本籍地のある市区町村役所
1-2.戸籍抄本(戸籍一部事項証明書)
戸籍謄本に記載された情報のうち、1人分の情報だけを抜き出した書類でを戸籍抄本といいます。
同じ戸籍に2人、3人など複数の人が入っていた場合でも、戸籍抄本を取得すればその対象の人以外の情報は載ってきません。
誰か特定の情報だけを提出すれば良い場合はこの書類を使います。
ただ、戸籍抄本で対応できる手続きであれば戸籍謄本でも代用できる場合がほとんどです。
(戸籍抄本の情報は全て戸籍謄本の中に含まれていますので)
「本当に戸籍抄本で大丈夫かな?」と心配に思った場合は戸籍謄本を取得しておきましょう。大は小を兼ねる、ですね。
<戸籍抄本が必要になる手続き>
- 生命保険や簡易保険の受け取り
- 自動車の相続・名義変更
※提出先によっては戸籍謄本を求められることがありますので、実際に手続する際は提出先にご確認ください。
<取得場所>
- 本籍地のある市区町村役所
1-3.除籍謄本(除籍全部事項証明書)
結婚、離婚、死亡、転籍などによって戸籍から人が抜けていき、その戸籍に誰もいない状態になってしまった戸籍を除籍謄本といいます。
例えば、結婚によって夫婦で新しい戸籍を作ることになりました。
もともとはお父さんの戸籍に「子」として入っていましたが、結婚を機にそこから抜け、次は配偶者と2人の戸籍を作ってそこに入るということですね。
※戸籍を抜けたからといって「子」でなくなるわけではありません。
次にお父さん、そしてお母さんも亡くなりました。
もうその戸籍には誰も残っていません。
これが除かれた戸籍、いわゆる除籍です。
相続手続きにおいては特定の誰かが除かれた戸籍を除籍と呼ぶこともありますので、必ずしもその戸籍から全員が抜けているものが必要というわけではありませんが、手続きによってどういったものが必要か、事前にしっかり確認してから取得するようにしましょう。
(例えばお父さんが他界し、まだその戸籍にお母さんが残っている場合でも除籍謄本と呼ぶことがあります。お父さんに限って言えば、それが除籍謄本ですよね。)
<除籍謄本が必要になる手続き>
- 自動車や不動産の所有権の相続・名義変更
- 預貯金や証券口座の解約・名義変更
- 未支給年金の受け取り、遺族年金請求手続き
- 相続税の申告など
<取得場所>
- 本籍地のある市区町村役所
1-4.除籍抄本(除籍一部事項証明書)
前述の戸籍抄本と同じ考え方で、除籍に記載された1人分の情報だけが記載された書類を除籍抄本といいます。
手続きによっては除籍抄本を提出するよう求められる場合もありますが、除籍謄本を提出することでも対応可能な場合がほとんどです。
どちらを提出すればよいか不安な場合は除籍謄本を取得するようにしましょう。
(絶対に抄本でないと受付してくれないという手続きは聞いたことがありませんが、担当者によってはマニュアル通り「抄本」を求められるかもしれません)
<取得場所>
- 本籍地のある市区町村役所
1-5.住民票
住民基本台帳法に基づいて作成されるもので、居住関係を公に証明する書類です。
難しい言い方をしましたが、おそらくほとんどの方がご存知であったり取得された経験がありますよね。
戸籍謄本と住民票の大きな違いは、
戸籍
→「本籍地」の市町村役場で取得
住民票
→「住所地」の市町村役場で取得
です。
住所を確認するのに戸籍謄本を出してもダメですので、何のためにその書類が必要なのか、そういった視点で考えて取得するようにしましょう。
なお、住民票の場合、希望すれば
- マイナンバー
- 本籍地
- 筆頭者
- 続柄
を記載してもらうことができます。
手続きによっては「本籍地記載ありの住民票を提出してください」「筆頭者との続柄がわかる住民票を持ってきてください」などと言われることもあります。
その場合、必要な情報が記載されていない住民票を提出しても受付してくれませんので、住民票を取得する場合はプラスアルファの情報が必要かどうか必ず確認することをお勧めします。
マイナンバー通知書やマイナンバーカードがない方で、急にマイナンバーが必要になった場合は住民票を取得するという方法もありますね。
住民票には「世帯全員(家族全員)」が記載されているものと「世帯員の一部だけ」が記載されているものがありますので、こちらも必要に応じて選択しましょう。
<住民票が必要になる手続き>
- 不動産の所有権の相続・名義変更
- 生命保険や簡易保険の受け取り
- 未支給年金の受け取り、遺族年金請求手続き
<取得場所>
- 住所地のある市区町村役所
1-6.住民票の除票
「除」という字がついていることからイメージできるかと思いますが、「除かれた」住民票、つまり住民登録が抹消された住民票のことです。
除籍謄本や除籍抄本についてはすでにご説明しましたが、「除」という字については同じ意味合いで使われています。
ではその「除」になる原因として、住民票は居住関係を公に証明する書類ですので、「死亡」以外に「転出」もあります。
要は引っ越しですね。
住民票の除票の場合、転出であればその転出先の住所と異動年月日が、死亡の場合には死亡年月日が記載されます。
お亡くなりになられた方の最終の住所を確認するのであれば、この住民票の除票を取得することで事足ります。
しかし、そもそも除票は住所地の市区町村役場で取得しますので、その時点で既に住所がわかっているということになり、行方不明や音信不通の相続人の住所を特定するのには使えません。
そういった目的であれば戸籍の附票を取得することで住所を調べることができますので、もし
- 相続人の中に住所がわからない人がいる
- 音信不通で今どこにいるかわからない人がいる
といった場合はお気軽にご相談ください。
<住民票の除票が必要になる手続き>
- 年金の受給権者死亡届の手続き
- 未支給年金の請求
- 遺族年金の手続き
- 国民年金寡婦年金の手続き
- 不動産の名義変更
<取得場所>
- かつて居住していた市区町村役所
1-7.死亡診断書
ご存知だと思いますが、人の死亡の事実を証明する書類です。
医学的にも法的にも死亡を証明する書類ですので、この書類を作成できるのは医師・歯科医師に限られます。
これをもとに戸籍や住民票に「死亡」の記載をするわけですので、当然のことですよね。
一般的に死亡診断書はA3の用紙で、左半分が「死亡届」、右半分が「死亡診断書」または「死体検案書」になっています。
死亡届=死亡の事実を届け出る書類ということは想像できると思いますが、では「死亡診断書」と「死体検案書」の違いは何でしょうか?
すごくわかりやすく言いますと、死亡する前に医師による診断や処置、管理があったかどうかです。
- 病気やケガで入院し、その後死亡した場合
↓
死亡の前に医師の管理がありますので「死亡診断書」になります。
- ご自宅で亡くなられた場合
↓
その死因を確認するために解剖をすることもありますが、そういった場合は死亡後に医師が確認・管理していますので、「死体検案書」になります。
どちらも死亡の事実を証明するという意味では同じですが、それを作成する原因や過程に違いがあるということです。
<死亡診断書が必要になる手続き>
- 死亡届の提出
- 生命保険や簡易保険の受け取り
<取得場所>
- 故人が死亡した病院
1-8.印鑑証明書
住所地の市区町村役場に「実印」として登録されている印鑑であることを証明する書類です。
「印鑑登録証明書」と呼ぶこともありますね。
印鑑は100円均一で売っているものでもハンコ屋さんにお願いして作ってもらった高価なものでもどんな印鑑でも良いのですが、とにかく1つ印鑑を決めて、それを住んでいるところの市区町村役場で「これを私の印鑑にします」といった形で登録します。
その登録した印鑑がいわゆる「実印」で、重要な書類には必ず実印を押印することになっています。
例えばローンを組む場合もそうですし、もちろん今お話している相続手続きもそうですね。
ではその押した印鑑が実印であることをどうやって証明するのか、それがこの印鑑証明書です。
印鑑証明書には住所、名前、生年月日、そして実印の印影が載っています。
(生年月日は市区町村役場によっては載っていないこともあるかもしれません)
実印を押し、印鑑証明書とセットにすることで「間違いなく本人が合意した」という証明になりますので、実印の管理はしっかり気を付けましょう。
尚、印鑑証明書はお住まいの市区町村役場で発行の手続きをしますが、実印登録をしたときに受け取れる印鑑カードを持って行って手続きします。
例えばご家族の印鑑証明書を代わりに取りに行く場合など、今までは委任状が必要でしたが、このカードを持って行くことで委任状が不要なところもたくさんあるようです。
代わりに取得に行く場合は事前に役所に連絡をして、持参物を確認するようにしましょう。
<印鑑証明書が必要になる手続き>
- 自動車や不動産の所有権の相続・名義変更
- 預貯金や証券口座の解約・名義変更
- 生命保険や簡易保険の受け取り
- 遺産分割協議書への押印
- 相続税の申告
<取得場所>
- 住所地のある市区町村役所
1-9.身分証明書
普段から使われていると思いますので特別な書類ではないかもしれませんが、運転免許証や保険証などがこれに該当します。
改めて取得するものではなくお手元にあるものですので、そういった意味ではすぐに提示ができて使いやすいかと思います。
一般的には氏名、生年月日、住所が確認できるものを身分証明書と言いますが、手続きによっては顔写真が添付されているものが必須の場合もありますのでご注意ください。
<身分証明書になるもの>
- 運転免許証
- 運転経歴証明書
- パスポート
- マイナンバー(個人番号)カード
- 保険証(※顔写真がないので注意)
など
1-10.法定相続情報一覧図
あまり聞きなれない言葉かと思いますが、平成29年5月29日からいろいろな相続手続きで利用できる「法定相続情報証明制度」が始まりました。
この制度を利用して発行される書類が法定相続情報一覧図で、まさに相続手続きのために作られた専用の書類です。
具体的には、
- 相続関係を証明する戸籍・除籍謄本や改製原戸籍などを全て揃えて法務局に提出
↓ - 登記官がその内容を確認し、相続関係を一覧図の形式で証明
してくれます。
本来、相続関係を確認するには戸籍・除籍謄本や改製原戸籍などを一つ一つ確認し、全ての書類が揃っていることを確認しなければなりません。
例えば、相続関係を特定するために戸籍・除籍謄本や改製原戸籍が全部で10種類必要だった場合、A銀行でもその10種類が確認してもらい、次のB銀行でも10種類、C証券会社でも10種類、不動産の手続きでも10種類を確認してもらうことになります。
これでは一つ一つの手続きで時間がかかってしまいますし、何よりもたくさんの枚数を取得しなければなりませんので、1通750円の発行手数料だったとしても10通で7,500円、20通なら15,000円になってしまうわけです。
(手続きのたびに原本還付をしてもらう方法もありますが、やはり全ての手続きが終わるまでにかなりの時間がかかることになります)
しかし、この法定相続情報一覧図があればたった1枚(※相続関係によっては複数枚になることもあります)で相続関係がわかり、もちろん法的な効力もありますので、様々な相続手続きで利用することができます。
そうです、この法定相続情報一覧図を使うことで、たくさんあった戸籍謄本等を提出する必要がなくなるんです!
これは本当に便利ですよね。
そしてなんと、その発行手数料は無料(※令和2年時点)ですので、必要な手続きの数に応じて、例えば3枚とか5枚発行してもらっても全く問題ありません。
これなら複数の手続きを同時進行で進めることができますので、より早く、そしてスムーズに相続手続きを進めることができます。
2.まとめ
たくさんの書類をご紹介しましたが、いかがでしょうか?
実際に相続手続きを行う際に、まず壁となるのがこれらの書類を集めることです。
特に戸籍につきましては、戦後生まれで本籍地を変更したことがないような方の場合は比較的容易に集められますが、そうでなければ非常に大変な作業になりますし、無事取得できたとしても、古い戸籍の字が読めず、行き詰まってしまったという方も少なくありません。
また、手続きによって必要な書類が異なりますし、普段からこういった書類を見る機会はあまりないと思いますので、
- どれを取得すれば良いのか
- その取得したもので本当に事足りるのか
- 間違ったものを取得していないか
など、いろいろ考え出すとイヤになって…という感じでご相談されることもよくあります。
だからといって放置してしまうと、期限に間に合わなかったり、様々なデメリットが発生してしまうことがありますので、お一人で不安な方はぜひご相談いただき、できるだけ速やかに手続きを進めていくことをおすすめします。