20歳になると必ず加入する「年金制度」。
誰もが加入するので身近な感じがしますが、いざ保険給付の制度のついては知らないことばかりではないでしょうか?
払うだけ払って、もらい方を知らないというのは…
ちょっと考えないとダメですよね。
そこで死亡に関する年金のお手続きと、具体的に今回のご相談がどういう状況なのかを順にご説明いたします。
目次【本ページの内容】
1.死亡時にするべき年金の手続き
年金の受給者が死亡した場合、そのまま何もせずに放っておいて良いのかというと、そうではありません。
死亡に伴ってしなければならない手続きがありますので、少し具体的にお伝えさせていただきますね。
1-1.どんな手続きが必要?
年金を受給していたご家族がお亡くなりになられた場合、まずは死亡届を提出します。
この手続きには期限がありまして、お亡くなりになられた日から
- 国民年金加入者
→14日以内 - 厚生年金加入者
→10日以内
が届け出期限となっています。
14日以内とか10日以内とか、そんなに急いで手続きできます??という感じもしますが、年金自体はやはり毎月支払われるものですので、
早い時点で死亡の旨を伝えておかないと、死亡しているのに年金が支払われてしまうという状況になり、受け取りすぎた年金を後から返さなければならない
ことになります。
死亡届の提出の際は、もちろん用紙一枚だけ書いて終わりではなく添付書類等ありますので、事前に年金事務所へお問い合わせいただくことをお勧めします。
加入状況やご遺族の状況によって必要な書類が異なりますので、お問い合わせの際、お亡くなりになられた方の年金番号をお伝えいただくとスムーズに話が進みます。
年金手帳が見つからない、年金番号がわからない場合も名前や生年月日等の情報から調べてもらえますので、とにかく事前に一度お問い合わせされることをお勧めします。
せっかく足を運んだのに、書類が足りずにまた足を運ぶことに…なんていうこともよくありますので。
また、現在では、年金番号とマイナンバーが紐付けされていますので、年金番号がわからない場合はマイナンバーをお伝えいただくことも有効です。
実際の年金手続きに関して、添付書類としてマイナンバーカードがあれば、住民票など提出を省略できるケースがあります。
まだ通知カードしかお持ちでない方は早めにマイナンバーカードを発行しておくことをオススメします。
(通知カードは「紙」で、マイナンバーカードは顔写真入りの「カード」です)
1‐2.どこで手続きするの?
今回のご相談者様は、役所に死亡届を提出した際、
「年金の手続きが必要ですので、年金事務所に行ってくださいね」
と案内されて不思議に思ったとのことでした。
よく皆様が勘違いをされるのが、
「役所で死亡届を出した=年金の手続きもできている」
と思い込まれているところです。
実は、年金の手続きは役所ではできない!のです。
死亡後には本当にたくさんの手続きがあり、年金についても役所で同時に手続きできるイメージを持たれている方が多いのですが、年金についての管轄は基本的に「日本年金機構」になります。
そして実際のお手続きや届け出に関しては、最寄りの「年金事務所」にて行います。
自営業なので国民年金に加入していましたが…
→年金事務所でOKです。
会社員なので厚生年金に加入していましたが…
→年金事務所でOKです。
つまり、国民年金でも厚生年金でも、年金の手続きは年金事務所でOKということです。
1-3.保険給付の種類
先ほど加入状況やご遺族の状況により必要な書類が異なるとご説明いたしましたが、その保険給付の種類についてご説明いたします。
<未支給年金>
本来は亡くなられた方に支払うべき年金ですが、死亡によって支払いが停止してしまったもの、受け取り口座が凍結して送金することができなかったものを、その遺族の方から請求することによって受け取ることができます。
これが、”未支給”年金です。
なかなかピンとこないかもしれませんので、もう少し具体的にお話させていただきますね。
年金はいつも何日に受け取られていますか?
2月15日、4月15日、6月15日、8月15日、10月15日、12月15日、それぞれ偶数月の15日に、2か月分をまとめて受給しておられると思います。
例えば6月15日に受け取る年金は、実は4月と5月分を受け取っているということになります。
つまり、6月1日に死亡した場合、本来受け取れるはずだった4月と5月分の年金が6月15日に振り込まれないという状態が生じます。
これが「未支給」の状態です。
もちろんこの年金はもらえるはずの年金ですので、ご遺族の方が請求することによって受け取ることが可能です。
しかし、未支給年金は誰でも受け取れるわけではありません。
- 死亡の当時生計を同一にしていた者であり、
- 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順に受け取る権利がある
と決められています。
②は特に要注意ですが、上位の順番の人が存在していた場合、それ以下の順番の人には権利はありませんので、例えば配偶者がおらず子がいた場合、父母や孫等には受け取る権利はないということです。
なぜなら、そもそも年金が老後の生活保障を前提としたものであるので、お亡くなりになられた方と生活を共にしていた方が貧困に陥らないようにという観点で支給されるものであるからです。
<遺族(基礎)年金>
国民年金加入者であった者の遺族に対して支払われる年金です。
こちらは、死亡の当時、その者により生計を維持していた子のいる配偶者またはその子が対象となります。
未支給年金との条件の違いから分かるように、より遺族に対する生活保障の意味合いが強いものとなります。
尚、すごく深く読み取らないとわからないのですが、遺族(基礎)年金は「子がいることが前提」です。
生計を維持していたとしても、配偶者のみでは受け取ることができません。
<遺族(厚生)年金>
厚生年金加入者であった者の遺族に対して支払われる年金です。
こちらも遺族(基礎)年金と同様、死亡の当時その者により生計を維持していた者が対象ですが、そのうち、配偶者または子が対象となっており、遺族(基礎)年金と配偶者に対する条件が異なっていることが大きなポイントです。
遺族(基礎)年金と異なり、生計維持の要件を満たせば子のいない配偶者でも受け取ることが可能です。
また、遺族基礎年金、遺族厚生年金共に、加入期間のうち、保険料納付済期間が10年以上あることが条件となります。
いろいろ複雑なことをお伝えしましたが、上記のことを証明するために、それぞれの手続きにおいて必要な書類が異なります。
例えば…
「生計が同一」であることを証明する
→世帯全員記載の住民票
「生計を維持していた」ことを証明する
→配偶者(子)の所得証明書
加入期間を確認する
→年金手帳
などが挙げられます。
ここまでのご説明で、「日本年金機構」に係る年金制度の概要について理解していただけたかと思います。
2.企業年金基金
「年金」という言葉がついているので、今までお伝えした年金と同じ制度ではないのか?と思われる方が大半かと思います。
でも、違うんです。
こちらは「企業年金基金」が独自に管轄している年金制度であり、「日本年金機構」と大きく制度も支給内容も異なります。
詳しくご説明しますね。
2-1.年金制度との違い
日本年金機構の年金制度は、「国民皆年金」として保険料を納付する義務があり、一定の年齢に達したら保険給付が行われる仕組みです。
それに対し、企業年金基金の年金制度は、
- 厚生年金加入者のうち希望する者が、
- 基本となる保険料とは別にさらに掛け金として保険料を納め
積み立てておくことで、一定の年齢や要件に達した際に
- 基本的な年金に上乗せして保険給付を受けることができる
という仕組みとなっています。
(国民年金加入者には、「付加年金」という上乗せ制度があります)
また、企業年金基金は確定給付企業年金を実施している事業主と、その事業所に使用される加入者の資格を取得したものにより組織されている団体で、「日本年金機構」とその母体も大きく異なります。
(確定給付企業年金とは、事業主と従業員の間であらかじめ給付額について合意したものに基づき、外部機関または設立認可を受けた基金で積み立てを行う制度です)
2‐2.どこで手続きするの?
「企業給付年金」は基本的には亡くなられた方が加入していた「企業年金基金」が管轄となります。
基金によっては合同して事務手続きを行う「企業年金連合会」が管轄となる場合もあります。
そして大半が郵送でやり取りをします。
今回のご相談者様のように「現況のおたずね」が届いたというのもそのひとつです。
2-3.どんな手続きが必要?
既に相続が開始している(お亡くなりになられている)場合、届いた「現況のおたずね」に死亡した旨を記載して返送すれば、後日「死亡届」が送られてきます。
そちらに必要事項を記載し、指示された添付書類を同封すれば、死亡に関するお手続きが完了します。
また、日本年金機構の年金制度と同様、条件を満たしている方には「未支給年金」のお手続きについても案内があります。
(実際には、死亡届と未支給年金請求書は同じ一枚の用紙に記入するようになっています)
この「現況のおたずね」が来る前であっても、年金証書などがある方は該当する企業年金基金に電話をし、死亡の旨を伝えて必要書類を送ってもらうと迅速にお手続きを進めることができます。
3.まとめ
- 企業年金基金による年金制度は、日本年金機構が行う国民年金や厚生年金に基づく年金制度とは全く別物である。
- それぞれに対して死亡に関する手続きが必要である。