1.祖父名義の不動産が孫に相続できないその理由
「祖父名義の不動産を子どもではなく孫に名義変更したい」というご相談ですが、非常に多く寄せられています。
- ほかの財産は子が相続することになるので、家や建物は孫に残したい
- いずれは子から孫へ相続するなら予め孫へ譲りたい
など、皆さま理由は様々なようです。
まず、結論から申しますと…原則はできません。
というのも、相続財産というのは、原則法律で定まられた順位に則り、相続人が決まります。
つまり、祖父の相続に関し、孫には相続権が生じないからです。
今回のケースでは、祖父Aが死亡した場合、その相続人は配偶者(祖母B)と子(父または母Cとその兄弟姉妹D)になります。
つまり、祖父の相続に関し、孫には相続権が生じません。
よって、相続権がない孫が直接相続することは不可能です。
しかし、実際孫の名義に変更することは不可能ではありません。
この場合、一旦父Cが相続して孫Eへ名義変更することは可能です。
但し、不動産の権利を移すには必ず原因が必要になり、この場合は「相続」ではなく「贈与」または「売買」にて移すことになります。
ということは、祖父Aから父Cへの名義変更にかかる手間や費用に加え、父Cから孫Eへの名義変更に係る部分のみではなく、土地の価格によっては贈与税などを払わなければなりません。
2.孫への直接相続が可能になる3つのケース
1章でご説明した状況は全て、相続発生後に起こりうる状況であります。
しかし、祖父Aがご存命のうち、つまり生前に対策をしておくことで直接名義変更をすることが可能になります。
また、思いがけない相続関係の変化で、可能となる場合もございます。
そのケースについて順にご説明いたします。
2-1.養子縁組をする
孫Eが祖父Aと養子縁組している(する)場合です。
養子縁組をした2人の間には法律上の「親子」の関係が生じますので、祖父Aの死亡時にはその実際の子である父Cと同じ順位で孫Eも相続人になり、遺産分割協議を経て直接名義変更ができます。
ただし、あくまで相続人間でお話し合い(遺産分割協議)がまとまっている状況であることが前提です。
2-2.遺言書を作成する
祖父Aが遺言書を作成している(する)場合です。
もちろん遺言書の内容は「孫Eに不動産を譲る」ということです。
この場合の注意としまして、先ほど「譲る」と書きました部分は「相続させる」ではなく「遺贈する」という言葉になります。
これは遺言書の書き方のご相談の際にもご案内させていただくことですが、法定相続人に対しては「相続」、法定相続人以外に対しては「遺贈」という言葉を使います。
そもそも孫は祖父の法定相続人ではないと前述しましたが、相続人ではない人に「相続させる」という言葉は適切ではありませんので、遺言書を作成される場合はご注意ください。
※孫に「相続させる」と書いたことで直ちに無効と判断されるという意味ではありません。
※法定相続人ではない人への不動産の遺贈は登録免許税(不動産の名義変更の際にかかる税金)が通常の5倍(評価額の0.2%)になりますのでご注意ください。
※遺言書による遺贈の場合、本来の相続人から遺留分侵害請求をされる場合があります。
2-3.代襲相続人になる
子である父Cが祖父Aよりも先に他界しているケースです。
いわゆる「代襲相続」という状況ですが、父Cが祖父Aよりも先に他界していた場合、孫Eが父Cに代わって法定相続人になり、直接名義変更をすることが可能です。
上記はあくまで代表的なケースになりますが、これ以外にも様々な状況が考えられますので、専門会家にご相談されることをお勧めします。
3.まとめ
- 原則、祖父から孫に不動産を直接名義変更することは不可能である。
- 遺言書の作成、養子縁組といった生前に対策をしたり、思いがけず代襲相続人とあることで、直接名義変更することが可能になる場合もある。